リク小説★
「…南美?」
歩いていた足を止めて、俯くあたしをそっと覗き込んだ。
「…ぐすっ…つっ…」
「…何…泣いてんの…?」
苦しいくらい、優しい声が
胸を締め付ける。
涙を拭う左手から零れて、頬に筋を描いた雫を
海の大きな手の平がすくった。
「南美?」
泣きたいわけじゃないのに。
伝えたいだけなのに。
言葉にするのが怖くて、喉の奥に突っ掛かった言葉が出てこない。
伝えられない。
「……っ、嫌い…。」
こんな言葉を言いたいわけじゃないのに。
「…え?」
「…なんで……」
何で、キスなんかしたの?
あんなの、事故なんかじゃない。
あの女、確信犯だよ。
そんな人に触れられたことが
触れられてしまったことが
嫌で、嫌で。
そんな人とあたしに対する行動に、変わりのない海も嫌だ。