リク小説★


バランスを崩した女が海に倒れ込んで

海の上に大きな影を作って…



キス。

していた。


…その影の中で、

海と……名前も知らない、女の人が。



「…………っ。」


言葉もでない。
足も動かない。
頭が働かない。


…ただ、この目に映っているものが
嘘であればいいと思った。



「あっ…ごめっ…。」


恥ずかしがるように口元を押さえた女に


今更もう何も浮かぶ言葉がなかった。



肝心の海は、影に顔を落として表情さえ見えないし。


もう…なんか。
逃げ去りたくて仕方なくて。


とことん伝わらないあたしの気持ちが、酷く可哀相で。


もどかしくて
もどかしくて


それをいつまでたっても
上手く言葉に出来ない自分が

ムカつく。


「…もういいよっ…!!海のバカ!!」


積もりに積もった苛立ちを海にぶつけて。


「大っ嫌い!!!!」


そんな言葉を残して
あたしは走った。
< 7 / 23 >

この作品をシェア

pagetop