Diamond devil
Chapter,5
痛むココロ
「あれ、姉御?三代目と一緒にもう出たんじゃないんですか?」
次の日の朝、家を出たところで、菊ノ井に声をかけられた。
「…ハル、もう出た?」
「え?ええ。てっきり姉御を迎えに行ったのかと…」
菊ノ井は不思議そうに私を見た。
「いつもの喧嘩ですか?」
「…ま、ね」
私は無理に笑って、菊ノ井の横を通り過ぎた。
歩きながら、無意識にため息が出た。
瞼が重い。
昨日、夜の間中、こっそり泣いたせいで、瞼が腫れていた。
何であんなに泣けたのか、自分でもよく分からない。
悔しいのか、悲しいのか。
ただ、隣にハルがいないという現実は、酷く落ち着かない。
「…おはよう」
教室の引き戸を開けると、クラスメイトたちに紛れて、ハルの姿が見えた。
私に気付いているはずなのに、イヤホンを付けたまま閉じた瞳を開こうとしない。
結局、かける言葉も見付からないまま、私も黙って席に付いた。