花の家
「……何にもないじゃない」

 拍子抜けだ。

 力の抜けた香里の顔に、多郎は、ほっと息を吐く。

「だから、何もないって言ったろ」

 じゃあ、どうして隠したりするのかと文句を言うと、隠してないよ、と困ったように笑う。

そこを否定されるとは思わなかった。

取っ組み合ってまで、隠していたくせに。

呆れて、ものも言えない。

最近、みんな変だ。

何がどう、とは言えないけど、絶対に変。

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