花の家
 男か女か、クラス中が噂をする。
 朝蜘先生の眉間には皺が寄るが、いつものことなので何の抑止力にもならない。

「入れ」

 先生の合図で教室前方の扉が開く。

 その瞬間、教室から音が消えた。



「初めまして、麝香 揚羽(じゃこう あげは)です」

 
 少年が日差しのように、柔らかく微笑む。

 皆、その非現実的な美しさに息を呑んでいる。

 さらさらと癖のない髪、頬に影を落とすほど長い睫毛、白い肌。

 毒蝶と同じ名をした男は、毒々しいまでの美しさを持っていた。


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