花の家
 運動能力のなさを自負する香里だ。

外に出られたは、出られたが……顔から落ちた。

土に鼻先を埋めて、泣きたい気持ちになる。

鈴が出来たからと言って、自分ができるなどと思ってはいけない。

香里は深く、胸に刻んだ。

コンクリートよりも衝撃が薄いのが、せめてもの慰めだろうか。


「お早う、香里」

 この無様に転んでいる姿が見えていないのか、と疑う。

頭上からの挨拶は、明るいばかりで心配が見えない。



「……揚羽、くん?」

< 110 / 274 >

この作品をシェア

pagetop