花の家
「制服って、これのこと?」

 香里の質問に揚羽は、自分の着ているブレザーの袷を指でつまんでみせた。

他に、どの制服があると言うのだろう。

「あれ、これって日曜日は着ないのかあ。じゃあ、また町でとってこないとね」

 揚羽は、思案顔で首をひねる。

唇に指をあてて、邪気なく言う。


「え、えと、揚羽くんは前の家から荷物を移し終わってないってこと?」

 都会では、日曜もオシャレで制服を着るんだ。

そんなことも知らない田舎者と思われなかっただろうか。

まあ、実際、田舎者なのだけど。

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