花の家
 揚羽は、村の外から来た人だから。

 揚羽は、別世界の人だから。

 不思議なことを言っても、特に気にはならなかった。

「きっと今日、咲くんだね。格別な匂いがする」

 あ、話に気をとられてたら、蝶結びが縦になっちゃった。

スニーカーに、歪な蝶がとまっている。

「咲くなら、約束の場所がいいに決まってるよ。早く行こう」

 揚羽は、靴紐を気にしている香里の手をとって言った。

 遊園地のアトラクションを前に気がはやっている、子どものような顔だ。

「ほら、早く」

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