花の家
「《アリ》って、うじゃうじゃいるし。ちょっとくらい数を減らしてやった方がいいと思う」

 とうてい納得できない説明に、香里は首を振る。

やめて、以外の言葉が出てこない。

 頑なにアリを庇う香里に、揚羽は眉を寄せた。

「……もしかして、香里、コイツに食べられたいの?」

 そんな筈がない。

話の飛躍に驚き、香里は、更に強く首を振る。

「そう、それならよかった。香里は優しいんだね」

 香里の返答に満足したらしく、揚羽は掲げた腕の力を抜いた。

 そうしている間に、《アリ》は霧の向こうに消えていった。

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