花の家
「僕、もう待つのも邪魔されるのも、飽きちゃった。早く行こう?」

 揚羽は、ぼんやりしてしまった香里の手を掴む。

香里は、自然、背がこわばった。

揚羽は変わりなく、綺麗な笑顔を浮かべているけど、その手は、躊躇いなく生き物を傷つける手だと分かってしまったから。

「早く早く」

 揚羽が香里の手を引く。

怖い、と思う。

思うのに振り払えない。

逃げたい。
もっと知りたい。

離れたい。
近寄りたい。

相反する感情に、身体がバラバラになりそうだ。

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