花の家
ハナスイチョウチョウ、アシチョウチョウ……
あの童歌を口ずさみながら、塚の周りを回った。
ククレククレ、クモノイト……
わたしを形づくる大切な思い出たち。
「ほら、見えてきたよ、香里」
それなのに、揚羽の声を聞く度に、全てがどうでもよく思えてくる。
今まで生きてきた全てが消えて、繋いだ揚羽の手が全てになりそうになる。
塚との距離が縮まる度に、胸の奥から知らない自分が溢れ出してきそうになる。
「さあ、約束の場所だ」
やっと足を止めた揚羽が、塚を白い指で示した。
上がった息に胸を押さえながら、香里は、それを見る。
変わり果てた塚の姿を。