花の家
 嫌だ、こんなこと言いたくない。

 香里は自分の口が紡ぎ出そうとしている約束に、おののく。

 こんな恐ろしいこと、わたしは願っていない。


 お願いです、どうか……、

 それなのに、胸の奥から湧いてくる衝動を抑えることができない。


 どうか……、


 眠っていた何かが、香里の奥底ではぜる。


(ああ、どうして私は、こんなことを願ったの?)

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