花の家


「わたしを、食べてください」


 世界が、ぐらりと揺れた気がした。

 冬へと移り変わろうとしている大地から、春の芽が吹き出す。

それはすぐに蕾へ変わり、花になる。

花が、咲き乱れる。

 まるで、あの森のように。

「ああ、綺麗に咲いたね、香里」

 揚羽が一面の花のただなかで笑う。

美しすぎる、この世の者ではない笑みで。


「……さあ、食べてあげよう。僕の花」

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