花の家
「……香里ッ!」

 花びらが宙に舞う。

地に咲き乱れた花を蹴り散らして、駆けつけた者がいたからだ。

 本当に、来てくれた……。

 いつも香里を助けてくれる背中が、そこにあった。

「下がってろ」

 後ろ手に香里を庇うようにして、蜂須賀 鈴目が異質の者と対峙している。

「何、また僕の邪魔をするつもりなの?」

 揚羽は、ひどく気分を害した様子で右手を上げた。

アリの足を切り落とした時と、同じように。

 その姿を見て香里は、たとえ心の中ででも、彼に助けを求めた自身を呪った。

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