花の家
 鈴が、死んでしまう。

 わたしのせいで、鈴が。

 そんなこと、あっていい筈がない。

「優しい香里の前で、弱いものイジメしたくないんだけどな」

 今からでも、どこか行ってくれない? と物言う仕草は相手を見下すものだ。

鈴は、屈辱に唇を噛む。

「やっぱ、お前が《てふ塚》の蝶々って訳か」

「僕は、僕だよ。どう呼ぶかは自由だけどね」

 鈴の背中からは、緊張がみなぎっている。

自分の一挙一動が、死に繋がる可能性があると知っている背中だった。

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