花の家
 どうして、そんな顔をするの?

酷いことをしたのは、そっちの方なのに。

「どうして、こいつを庇うの、香里」

 振り上げた腕が、下ろすか否か迷うように震えている。

「香里が優しいのは分かるけど、凄くやだ」

 拗ねた風に歪めた顔は、学校にいるときの揚羽と変わらないように見えて、動揺してしまう。

鈴を殺してしまいそうな人なのに、眩しい笑顔を思い出してしまう。

「ま、待って……どうしてこんなことするの? 理由を教えてよ」

 場を収めようと、そう言っても揚羽の眉根は悲しげに寄るばかりだ。

「やだ、やだやだっ! 香里は酷いよ、僕、たくさん待ったのにっ」

 揚羽は勢い任せに、見えない刃を振り下ろした。



血が、舞った。

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