花の家
 な、何……?

 彼女の行動の意味が分からず、香里は無意識に指を引っ込めようとした。

その指を、智恵子の手が上から押さえつける。

「何でもするんでしょ?」

 低められた声、

「ちーちゃん、い、痛いよ……」

 込められた力の強さに、香里の心はさざ波だった。

鈴目の唇に、血の汚れがついてしまう。

男の子には不似合いな赤が、唇に乗っている。


ぴくり、と鈴の体が震えた。

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