花の家
「甘ぇ、」

 かすれた男声が、何ごとか呟く。

唇を割って、遠慮がちな舌が伸ばされる。


 ぴちゃり、

 水音を立てて、鈴が香里の血を舐めとった。

「鈴……?」

 控えめだった舌が、だんだんと大胆になる。

そして、我慢しきれなくなったように、指へ吸い付く。

 何、これ……

 身体の力が抜けていくのが分かった。

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