花の家
 こんな少量の血で、貧血なんてある筈ないのに。

体力ごと吸い取られているみたいだ。

「す、鈴……」

 ちう、

 少年は、赤ん坊のように無心に指を吸っている。

力が抜けて、崩れ落ちそうになる体を支え、香里は鈴を見る。

そして、小さく息を呑んだ。


傷口が、塞がっていく。

少年の目が、うっすらと開く。

その目が、ぼんやりと金色に光った。

香里の知らない飢えた輝きが、そこにはあった。

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