花の家
「かおり、」

 鈴が香里の頬に手を伸ばす。輪郭をすべった指先が、肩に触れる。

「もっと、くれよ」

 肩に下りた手が、驚くほどの強さで香里を掴んだ。

ぎらぎらと光る、人間離れした両眼から視線が外せない。

花の咲き乱れる地に体を押しつけられて、香里は下から鈴を見上げる。

鈴の犬歯は、あんなに鋭かっただろうか。


「……調子に乗るなよ」

 遠くから、低く絞られた声がした。

と同時に、地面が噴き上がる。

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