花の家
「……ぶちギレたわね。今時の子って、怖いわあ」

 癇癪を起こした子どものように暴れる揚羽を見て、智恵子は呆れたような声を出す。

「ちーちゃん、そんなこと言ってる場合じゃないよ! 鈴が!」

 生命の危機である。

鈴に潰されながら訴えるものの、声は弱々しい。

血を吸われてから、体に力が入らないのだ。

「放っといても、死にゃしないわよ。花の蜜、あれだけ吸ったんだもの」

 やれやれ、と智恵子は大げさに肩をすくめる。

「全く、役に立たない男よね」

 日ごろ快活な少女は、そう言って気を失っている鈴を蹴り転がした。

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