花の家
 さっきは鈴に意識がいっていたので気づかなかったが、和服だ。

若木色の着ながしに、紺の羽織り。

ワイシャツにネクタイのイメージしかないので、ちょっと驚いてしまう。

「部屋着だ。おかしいか?」

 言って、袷を直す仕草は、いかにも堂に入っている。

言葉通り、普段から着ているのだろう。

「部屋着ってことは……ここは……」

「私の家だ」

 まさかと思って尋ねれば、あっさりとした肯定が返った。

 朝蜘の家だと考えると、羞恥がむくむくとふくれあがってくる。

先生の家で眠りこけて、鈴と口喧嘩……考えれば考えるほど恥ずかしい。


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