花の家
「体の具合は、どうだ。開花したてから、飛ばしていたようだが」

 銀縁の眼鏡を押し上げて問う朝蜘に、香里は体をかたくした。

男のたった一言で、少女らしい恥じらいも、何処かへ消えてしまう。


「開花したて……」

 まただ。

 鈴も揚羽も、朝蜘も。

香里には、理解できないことを言う。

「何なんですか、開花って……先生は、何を知ってるんです?」

 声が震えた。

答えは想像もつかなくて、無性に不安になる。

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