花の家
 その名前を口にした途端、鈴の顔が目に見えて強ばる。

殺されかけたのだから、当たり前だけど。

「朝蜘先生が来て……それで……」

 糸に捕らえられながら暴れていた彼は、どうしたのだろう。

一度、そう考えると、今の静けさが不気味なものに思われてくる。

 皆が黙っていると、朝蜘が低く舌打ちを漏らした。

思い出すのも不快だ、と言わんばかりに。

「……アレは逃げた。自分の腕を引き千切ってな」

 ぞわり、と背筋が寒くなる。

「自分の、腕を……? じゃあ、その、揚羽くんは死んでしまったんですか?」

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