花の家
 片腕をなくした同級生のグロテスクな想像に、香里は気分が悪くなった。

腕がちぎれたまま動いたりしたら、もう生きていないんじゃないだろうか。


その、動揺に目を泳がせる様がお気に召さないと見えて、朝蜘は眉間のしわを深くする。

「まさか君は、あの化け物の心配をしているんじゃないだろうな」

 責めるような声音に、香里は首を縮めた。


確かに、みんなが危険な目に遭ったのだから、揚羽くんのことを気にしていちゃダメなんだろうけど。

でも、やっぱり香里は、揚羽の悲しそうな顔が気になってしまっていて。

クラスメイトに死なないで欲しいと願うのは、そんなにいけないことなんだろうか?


朝蜘先生の話を聞いても、約束については分からないままだったし、結局、彼のことは分からないことばかりだ。



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