花の家
「優しい君には喜ばしいことに、あの化け物は死んでいない。今も、ぴんぴんしているだろう」

 嬉しいだろうな?

朝蜘は嫌味たらしい言い方をする。

「ぴんぴんって……」

 腕がちぎれて元気な訳がないじゃない。

香里は朝蜘の高圧的な態度に、口をとがらせた。


「言葉通りだ。虫と人とでは、自然治癒能力が違う」

 そう言って、朝蜘は近くであぐらをかいていた鈴の襟首をつかむ。

「うわっ、朝蜘さん、よせっ! シャツが伸びちまうよ!」

 鈴の抗議の声は、当たり前のように無視された。

朝蜘は鈴のTシャツの襟ぐりを広げ、その肩をさらけださせる。


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