花の家

 初代の朝蜘は、揚羽を《てふ塚》に封じた後、それを要にして村全体に結界をはった。


「それ以来、この世と異界は隔てられ……簡単には行き来できなくなった……」

 智恵子は言って、同意を求めるように朝蜘を見る。

朝蜘は、小さく頷いた。

 だが、蝶は檻を壊した。

「長い年月が糸を風化させたんだろう。まだ完全に壊れた訳ではないが……」

 早急に結界をはり直す必要がある。

 今の状態は、村を囲う壁が薄い皮膜になってしまったようなもの。

突けば破れる、やわな結界だ。


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