花の家
 異界の巨大なアリの脚が、結界を突き破るイメージが頭をよぎる。

あんな怪物が、いくらでも村の中に入れてしまう状態だってことなんだ。

「しばらくは、安全な生活とは言えないだろうな」

「そんな……わたし、どうしたらいいんですか?」

 当然のことながら、香里は食べられたくなんかない。

かと言って、戦う力なんか持っていないし、自衛の方法なんて、さっぱりだ。

「ふむ。多少、自覚が出てきたようで何よりだ」

 朝蜘は顎に手をやり、思案げに香里を見る。

 そうして、口にしたのは拍子抜けするような台詞だった。

「普段の通り、学校に行きなさい」


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