花の家
 馴染みのない朝蜘家のハンガーにかかっているのは、間違いなく香里の制服で。

ああ、学校の鞄まで置いてある。

本当に、本当に、ここに住まなきゃいけないんだ、わたし。

 何だか、考えれば考えるだけ悲しくなってきて、香里はうつむいてしまった。

 そんな香里の肩を、智恵子は元気だしなさいよ、と二回ばかり叩く。

 もちろん、命を狙われている身なのだから、贅沢は言えないと分かっている。

だけど……。

 はあ、とため息一つ、香里はのろのろと体を起こした。


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