花の家
 着替えは早く済ませたのだが、来たこともない家だというのを忘れていた。

簡単に言えば、迷った。

 うろうろと遠慮がちに家中を歩き回る。

結局、食卓に辿りつくまで、ずいぶんと時間がかかってしまった。

 つ、疲れる……。

どうして、朝ごはんを食べる前から、こんなに疲れなきゃならないんだろう。

「早く座りなさい」

 そのうえ、これだ。

朝蜘先生が、ムダに威圧的に向かいの席を示している。

 やっぱり、先生とご飯食べるんだ……絶対、話なんて弾まないよね?

 びくびくして、なかなか席に座ろうとしない香里を、朝蜘は黙って見ている。

恐い! 恐い! 恐いってば!


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