花の家
 目がすわっている香里に、智恵子は慌てたように首を振る。

「何言ってるのよ、私が朝蜘さまと食事をご一緒するなんて! 恐れ多い!」

 恐れ多い!?

香里は、智恵子の言葉にぎょっとして裏返った声をあげた。

香里にとって朝蜘は、ただの無愛想な担任である。

神様か何かに対するような智恵子の態度は、妙ちくりんなものでしかなかった。

「そんなこと言わないでよぉ! ね? ご飯だけだからあ……」

 二人きりにされたら、わたし泣くし!

 とは、さすがに本人を目の前にして言えないが、必死に視線で訴える。

「そんなこと言われても……朝蜘さま、何とか言ってやって下さいな」


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