花の家
 智恵子は本当に困り果てた様子で、朝蜘に呼びかけた。

 朝蜘は眼鏡の奥から、呆れたような視線を二人にやり、小さくため息を吐く。

怒られるかと思って、ぎくりとするが、

「智恵子、私は構わない。一緒に食べなさい」

 返されたのは許しの言葉だった。

 よかった。ちーちゃんがいれば、会話には困らないはずだ。

……と、期待したのは短い間だった。

 智恵子ときたら会話どころじゃないようで、顔を真っ赤にして、うつ向いている。

 本当に緊張してるんだ……?

 香里のように慣れない人間に対する緊張ではない。

 先生って、そんなに偉い人なわけ?


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