花の家
「母さんが、姉さんの分の弁当も用意してくれたから」

 いつも通りに、桃色の布に包まれたお弁当に、またうるっときてしまった。

しかし、続いた言葉には心が沈む。

「正式に籍を入れるまでは、うちの娘だから、って」

 籍を入れる……ほんとのほんとに?

「こんなのおかしいよ……」

 勝手に決められた結婚相手なんて。

「嫌なのか?」

 鈴が、視線をちろりと寄越して当たり前のことを問う。


< 221 / 274 >

この作品をシェア

pagetop