花の家
「俺は……姉さんは、朝蜘さんの家にいるのがいいと思う」
しぼり出すように吐かれた答えに、頭に血がのぼる。
頬を真っ赤にして、唇を噛みしめる香里に、多郎はあわてる。
しかし、その口下手な喉からは、何の言葉も出てこなかった。
「香里、いい加減にしろ、多郎が困ってる」
「多郎ちゃんの心配はするんだ!」
意地の悪いことを言う香里の肩を、鈴がつかむ。
強く揺さぶられて、香里は身をすくめた。
「俺がお前の心配してないって言うのかよ」
鈴は口を真っ直ぐに引き結んでいる。