花の家
 思わず、後退ると何かに足を取られて転ぶ。

 足下を確認すると驚いたことに、何もなかった。

 知らない地面があるだけだ。

 なんで? 何かに、つまずいた筈なのに。

「いやっ……誰かっ」

 怖い。どうして私はこんな場所にいるの? さっきまで授業を受けていたのに。

 理解の及ばない事態に、体が震える。

 その香里の震える肩に何者かが触れた。

「だ、誰?」

 振り返ると、そこに姿はない。
 
 恐怖に、ひぃっと短い声が出る。

 正体の無い手を刎ね除け、香里は身を捩る。

 今度は見えない何かに、足をぶつけた。

 誰か助けて。誰か、誰か、誰か!

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