花の家
 わたし達の学年が卒業したら、本校舎に新しい図書室ができるらしい。

多郎ちゃんだけ新しい図書室が使えて、ずるい!

なんて言ってたなあ。

香里は、多郎の困った顔を思い出して、くすりと笑う。

家に、帰りたいなあ。


でも、わたしの帰る家は、朝蜘先生の家になってしまった。


「……考えない、考えない」


 ひたすらに沈んでいきそうな気持ちを励まし、香里は図書室のドアノブを握る。


 ぐわしゃああぁっ!


 扉を開けたのと、すさまじい音が廊下に響いたのは、ほぼ同時だった。


< 236 / 274 >

この作品をシェア

pagetop