花の家

 タイミングが悪すぎる。

香里は、自分の運の悪さを呪った。


もっと早くに音がしていれば、ドアなんて開けなかったのに。

どう考えても、ふつうの図書室から聞こえてくる音じゃない。


どうしよう、と恐る恐る、首だけ伸ばして中をうかがう。


「お兄ちゃん、落ち着いて!」

「ええい、離せ。わしは落ち着いておる!」


 叫び合う声が、直ぐに事件の中心を知らせた。

おかっぱ頭の女の子と、そのお兄ちゃん、らしき人がいる。

なんだあ、ただの兄妹喧嘩かあ。

……なんて安心してしまいたいところだけど、そうはいかなかった。


彼らの足元では、図書室の大机がまっぷたつになっていたのだから!


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