花の家
「文庫どころか、ハードカバーでさえ、」
男は、貸出しカウンターに置いてある一冊を手にとった。
表紙のしっかりした、厚みのあるハードカバー本だ。
……角で殴ったら、人が殺せそうなやつ。
「この通りじゃ」
それが、いとも簡単に……引き裂かれたッ!
嘘でしょ?
全然、力をいれたように見えなかったんだけど……。
紙と言ったって、ひょいと破れるようなものじゃない。
香里は、細腕の男の馬鹿力に放心してしまった。