花の家

足の力が抜けて、ぐらりと体勢を崩す。

背に当たった本棚が、がたり、と音を立てた。


「……誰じゃ」

 低められた声が床をはってきて、頬を撫でる。

声に続いて振り向いた顔に、香里は息を呑んだ。


 信じられないほど顔色が悪い。

長い前髪から覗く目には、隈がくっきりと浮かんでいる!

その容貌の、あまりの不健康さに香里は体が引けてしまった。


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