花の家

「……あ、いえ、わたし、すぐ出て行きますので」

 関わり合いになりたくない。

香里は、怪しい男を刺激しないよう引きつった笑みを浮かべる。


「貴様……」

 らんらんと男の眼が光る。

強い感情の宿る目だ。

香里は、伝わってくるその感情に戸惑う。


「花のむすめかッ」

 その感情は、ふつう初対面の人間に向けられるものではない。


それは、まぎれもない憎悪だった。


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