花の家
何で? どうして?
そんなことを考えるより先に、体が逃げている。
ドアノブに飛びついた香里に向かって、男の体がぐん、と迫る。
香里を捕えようとする手が、信じられない速さで伸びてきた。
反射的に首をちぢめて、目を閉じる。
「……っ!」
ずどん、と銃声のような音が耳の真横でした。
何の音だろう。香里はこわごわと薄く目を開けて、顔を青ざめさせた。
図書室のドアに、男の腕がひじまで埋まっている。
香里を捕まえようとした手が、勢い余ってドアを貫いたのだ!