花の家

 1メートル離れた辺りから、遠慮がちに呼びかける。


「敵の情けは受けん……」

 真っ青な顔をしながらも、男は香里の心配をつっぱねた。

わたし、敵になったつもりないんだけど……。


「保健室の先生、呼んで来ましょうか?」


「いらん、いつものことじゃ……」

 よくよく見れば、男は襟元に青の学年章をつけている。

ひとつ先輩の三年生だ。


 人間だったんだ……。

 あの馬鹿力、魔物のたぐいかと。

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