花の家
「誰じゃと? 大方の見当くらいはついておろうが」
すねたように顔をそむけられて、香里はさっと青ざめた。
「やっぱり……虫人なの?」
震える問いに、空気が止まる。
場が凍りつくって、まさにこういう感じ。
一気にふくれあがった緊張感に、金縛りにあったみたいに動けない。
この緊迫のスイッチは、何処にあったんだろう?
分かっているのは、この具合の悪そうな人がすごく怒ってるってこと。
「どこまで愚弄すれば気が済むのじゃ、花のむすめがァ……ッ!」