花の家
 体が浮く感覚がして、抱き上げられたのだと気付く。

 鈴に抱えられていると分かっていても、目に見えるのは、ただ空中に浮いている自分で、ぞっとした。

 胸元と思しき場所にしがみついても、空気を掴んでいるようで怖い。

「大丈夫だからな」

 鈴の焦った声が、顔があるらしいところから聞こえると、体がぐん、と前に出た。


 香里を抱えた鈴が走り出したのだ。

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