花の家

 だから、何でそうなるの!


 腕に引っかけていた図書室のドアを粉砕して、男が立ち上がる。


「しらをきるつもりか、この性悪むすめッ」


「わたし、あなたのことなんて知りませんッ!」


 そう必死で叫んだ台詞に、男はますます目をつり上げた。


「ならば聞け、わしは紛れもなく人の身よ! 知らぬとは言わさんぞ。甲矢(かぶとや)家、17代当主……」


「か、かぶとや……?」


 知らない。


 すがすがしいほどに、知らない。


 困惑した私に、かぶとや(推定)さんは、ぴしりと固まった。


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