花の家
「体調が悪いのに叫んだりするからですよ」


「……本当に貴様には、花のむすめとしての記憶がないと言うのか」

 花のむすめとしての、記憶?


「ど、どういうことですか?」


 香里の問いかけに、男が青白い顔を上げる。

口には、べったりと赤い血がついている。

吐いたのだろうか。

そこまで具合が悪いとは思わなかった。

驚いてしまって、声も出ない。


「花の家の娘は、二つの魂を持っている……」


 二つの魂?


「引き継がれる花人の魂と、生まれくる人間の魂を」

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