花の家

 私の中に、知らない私がいる。

そう感じたことが、確かにあった。

 揚羽くんを懐かしく感じる私。


 揚羽くんを恋しく感じる私。


 ……揚羽くんに食べられたいと願う私。


 それが花人としての魂だと言うの?


 ありえない!

 花人が蝶に食べられたがるなんて、あるはずがない。

村人に歓待された花のむすめが、どうして死を望まなくちゃならないの?



「そうか、貴様はできそこないという訳か」


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