花の家
 並んだ木の間を、香里はぐんぐん進んでいく。

 どれもこれも年を経た、太い幹を持っている木だ。

 一本の木を曲がると、真正面に腕がまわらない程の大木が現れた。

 鈴は足をゆるめようとしない。


「ひっ……!」

 ぶつかることは確定的で、香里は短い悲鳴をあげた。

 だが、衝撃と痛みはやってこない。


 香里の体は、目の前の木を通り抜けた。

 まるで鈴目ではなく、香里が空気になってしまったように。

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