花の家
 え? どうして?

 もしかして、目に見えなくなってしまったのは私の方なのだろうか。

 香里は混乱する。

「鈴、鈴、わたし……」

 何を尋ねていいのかも分からずに、香里は幼馴染みの名前を呼んだ。

 ねえ、わたし、どうなっちゃったの?


「こら、蜂須賀、何をしている。授業中だぞ」

 遠くから、厳しさに形を与えたら、こんな声になるだろうという声がした。
 
 朝蜘先生だ、と思う。

 でも、確信はない。姿は見えないから。

「先生」
 
 何処かすがるような鈴の声を聞いて、やっと、やっぱり朝蜘先生なんだ、と分かった。

「……館花じゃないか。どうした、具合が悪いのか?」

 ああ、よかった。わたし、見えてるんだ。

 香里は、たったそれだけのことに泣きそうになる。

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