花の家
「今、君の御霊はそちらへ行っているが、体はこちらにある」

 御霊? 先生、よく分からないんですが、それ授業で出てきましたか?

「感触を頼りに戻って来なさい」

 そうだ、この手に触れているのは学校で、この体温は先生なんだ。

 香里は自分の触感に心を集中させる。

 ここは、学校。

 ここは森じゃない。

 ここは、学校。

 心の中で何度も唱える。
 自分の目で見たものを否定するのは大変だったが、必死に言い聞かせる。

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